ミステリー板の拾い物

8 :名無しのオプ:2011/09/13(火) 10:05:35.30 ID:8wAdwk2L
ついさっき、思いついたネタ
『白昼堂々の殺人』

 ある夏の日の午後一時、目の前で殺人があったと
通報があった。警察が駆けつけると、交差点の
すぐそばの歩道に、男が倒れている。
強い日差しが照りつける事件現場である。

色白の若い女性が、死体の脇にしゃがみこんで
震えていた。若い刑事が落ち着かせて、
詳しい事情を訊ねる。通報したのはこの女性らしい。
殺された男は赤の他人で、名前も知らないとのこと。
 以下、彼女の説明。
『横断歩道の前で、信号がかわるのを待っていた。
すると、隣の人がいきなりうめき声をあげて
くずれおちた。見ると、黒いシャツの男が
ナイフを握りしめて笑っている』
 その黒いシャツの男が刺したらしい。
『その男は、私に目もくれず、笑いながら
去っていった。あの笑いかた、ひょっとしたら
心を病んでいるのかも』

 白昼堂々の凶行である。確かに頭がおかしい
人間のしわざかもしれない。しかし……

 高いビルに囲まれた交差点で、
老刑事は汗をかきながら考えていた。
(彼女の供述には嘘がある)


9 :名無しのオプ:2011/09/13(火) 10:33:06.67 ID:8wAdwk2L
 若い刑事は目を丸くした。
「彼女が嘘をついているんですか?」
 老刑事が、ゆっくりと歩き出した。
若い刑事もその後を追う。
 やがて、事件現場から数十メートル離れた
別の交差点についた。横断歩道の前で
二人は足を止める。

「彼女の話には、疑わしい部分がある」
「どこ、ですか?」
「しかし、暑い。直射日光がきついね」
 老刑事がいきなり、事件と関係なさそうなことを
話しだした。若い刑事は呆然とし、
老刑事は汗を拭いている。
 高いビルに囲まれた、夏の午後の交差点である。

「太陽がまぶしいだろ?」老刑事が説明を始めた。
「横断歩道の前に立つと、日差しが直接当たるんだ。
こんな場所で信号を待つ人は、滅多にいない。
特に、色白の若い女性はね」
 若い刑事は、周囲を見渡した。そして納得する。
「確かにそうですね。女性はみな、
一歩下がってビルの陰に佇んでいます」
「うむ。『横断歩道の前で信号がかわるのを
待っていた』というのは信じられないね。さて、
どうしてそんな作り話をするのか質問してみよう……」

  fin