( ^ω^)鉛色の海

( ^ω^)「やあ、私は世界一の名探偵だ」
( `д´)「本当に来てくれたのか。
こんなヨーロッパの北の果てまで。悪いな」
( ^ω^)「いや、なんでもないよ」
( `д´)「じゃあ、話は医者のじいさんから
聞いてくれ。俺は、漁船の整備で忙しいからな」
(;^ω^)……
( ^ω^)(溺れ死んだ息子が
砂浜で見つかったというのに、
このオヤジの態度はなんだろう)

( @∀@ )「あれは、溺れ死んだのではない。
ワシは長年この港町で医師をやっておる。
溺死など日常茶飯事だ。簡単に見分けられるぞ」
( ^ω^)「では、死因はなんですかな?」
( @∀@ )「不明だ」
(;^ω^)(……このクソジジイ)
( @∀@ )「それなら、こちらから質問だ。
冬の冷たい海で男が死んだ。
原因は、なにが考えられる?」
( ^ω^)「溺死……。ああそうか、
心臓マヒが考えられますね」
( @∀@ )「そうだ。しかし、漁師の息子は
海に落ちたあと、精一杯抵抗した。
泳いで砂浜へ辿り着き、そこで動けなくなった」
( ^ω^)「溺死や心臓マヒではなく、
凍死の可能性もあると?」
( @∀@ )「答えはひとつに決められんのだ。
死因不明で手続き上の問題があるなら、
衰弱死ということにしてくれ」

( ^ω^)「やあ、私は世界一の名探偵だ。
……お? 君の顔に見覚えがあるぞ」
( ´∀`)「探偵さん、お久しぶり」
( ^ω^)「誰かと思ったら、首都警察の
副署長じゃないか。なぜここに?」
( ´∀`)「私はここの出身なんです。
故郷で溺死体が見つかったと聞いて、
特別に志願して捜査を補佐しています」
( ^ω^)「ふむ。私が天才であることは
知っているよね。解決してあげるから、
捜査の結果を教えたまえ」
( ;´∀`)(……この人、天才だったかなあ)
( ´∀`)「漁師の息子は酒場で
飲んだくれたあと、町外れにある
この岬から真夜中に突き落とされたようです」
( ^ω^)「事故や自殺の可能性は?」
( ´∀`)「この岬に残っていたのは
足跡だけです。事故や自殺なら、
車がここに残っているはずです」
( ^ω^)「ほほう」
( ´∀`)「酔漢が、遠い町外れの岬まで
徒歩で来て自ら飛び込んだとは考えられません。
ここに車がないのは、突き落とした男が
乗って逃げたからでしょう」
( ^ω^)「そうか……。しかし、
ここから見る冬の海は、まるで鉛のような
色をしているなあ……」

( ^ω^)「酔った息子さんを、
誰かが車で町外れの岬まで運んで、
海へ突き落としたようですね」
( `д´)「なにが起きたのか
知りたかったんだが、まさか殺人とは……」
( ^ω^)「ところで、この町の方々は
働き者ですな。男性も女性もみな、
漁船の整備に余念がない」
( `д´)「あ? まあ、そうだな。
冬の季節は潮の流れが激しくてね。
ちゃちな船では、沖へ流されてしまうんだ」
( ^ω^)「漁は準備が大切なわけだ」
( `д´)「男は漁師になる。女は結婚して
男を支えるか、都会で仕事を探す。
それでこの町は何百年もやってきたんだ」
( ^ω^)「ところが、息子さんは……」
( `д´)「あいつは酒好きな怠け者だった。
ただ、殺されるほど悪い奴じゃなかったと思う。
今でも信じられない。しばらく眠れそうにないな」

( @∀@ )「おお、探偵さん。
ひとつ報告することを忘れておった」
(;^ω^)(忘れた……。
やっぱりクソジジイだったか)
( ^ω^)「報告とは、なんですかな?」
( @∀@ )「この写真を見たまえ」
( ^ω^)「……コイン? コインの写真?」
( @∀@ )「これが、遺体の口の中にあった」
( ^ω^)「ほう、口の中に?
コインの表は数字。裏はこの国の
女王陛下の肖像か。どこにでもある小銭ですな」
( @∀@ )「コインの実物は、首都警察の
副署長さんにあずけてある」
( ^ω^)「ふむ、大きな手がかりだな。
確実な物証はないが、おそらく犯人は……」

探偵( ^ω^)は、なにかに気づいたようです。
さて、港町の殺人事件。
探偵( ^ω^)は誰を疑っているのでしょう?


( ^ω^)「息子さんは、岬から海に
突き落とされました。犯人はなぜ、
この方法で息子さんを殺したのか?」
( `д´)「さあ……」
( ^ω^)「この季節の潮の流れは、
かなり強い力で沖へ向かうそうですね」
( `д´)「……あ。沖へ流されてしまえば
遺体が見つからない」
( ^ω^)「いかにも。ただの失踪として
処理されることでしょう」
( `д´)「しかし、息子は泳いで
砂浜へ辿り着いたそうだが……」
( ^ω^)「そう、あなたの息子は
頑強な方だったんですな。そして、
コインを口の中に入れた。犯人の正体を
知らせるために」

( ^ω^)「海に突き落とされて
ずぶぬれの彼は、他に方法がなかった。
砂浜に犯人の名前を書いても消えてしまう
だろうし、紙に書き残すのも無理そうだ」
( `д´)「それで、コインを?」
( ^ω^)「コインには、女王陛下の
肖像が刻まれてましたな。もしかして、
犯人は女性なのではないか」
( `д´)「なるほど」

( ^ω^)「そして、もうひとつ。
犯人の立場で考えてみます。沖へ流されることを
期待して海に突き落としたのに、砂浜で見つかった」
( `д´)「驚くだろうね」
( ^ω^)「犯人なら驚いたでしょう。ところが、
この港町の皆さんは、ご自分の仕事を優先させた。
普段どおり、漁船の手入れをしている」
( `д´)「事件と無関係だから、驚かないのか」
( ^ω^)「ところが、一人だけが
特別な行動をとっている。港町での溺死は
珍しくないのに、故郷だからと
わざわざこの町に戻ってきて、事件に
首をつっこんでいる。ひょっとして、
重大な証拠は握りつぶすつもりかも」
( `д´)「……まさか」
( ^ω^)「そう、首都警察の副署長。
..
彼女が犯人ですよ」