( ^ω^)ドアの向こう

(  ゚益゚)「詐欺師の野郎は、この家にいるんだな?」
( ー`дー´)「はい。私が確認しました」
(  ゚益゚)「よし、家に踏み込むぞ。
いまさらノックの必要はないな。おい、邪魔するぜ。
……あっ!」
( ー`дー´)「し、死んでる!」
( ;゚益゚)「なんということだ」
(ー`дー´)「見張りのみんな、来てくれ! 非常事態だ」



( ^ω^)「密室状態の家から殺人犯が消えたんだって?」
(  ゚益゚)「まあ、そう思ってるのは俺だけなんだけどな」
( ^ω^)「そういう難しそうな事件は、まず私に相談したまえ。
きみは優秀な刑事だけど、私はさらにその上をいく。
私は、世界を股にかけて活躍する名探偵なんだぞ」
(  ゚益゚)「……」
( ^ω^)「どうした、主任警部くん」
(  ゚益゚)「……なんでもない。事件そのものは、単純なんだ。
小さな家のドアを開けたら、目の前で指名手配中の
詐欺師が倒れていた。調べた結果、他殺で間違いない」
( ^ω^)「その家には?」
(  ゚益゚)「死んだ詐欺師のほかには、誰もいなかった。
しかし……」
( ^ω^)「しかし? 何かあったのかな」
(  ゚益゚)「言葉で説明するのは面倒だな。試してみよう。
このドアは押して開けるタイプか。あの家と同じだな。
あんた、この会議室から、廊下に出てくれ」
( ^ω^)「ほう? 廊下に出ればいいんだな」
(  ゚益゚)「ドアを開けて、会議室に入ってくれ」
( ^ω^)「うん?」
(  ゚益゚)「じゃあ、もう一度。廊下に出てから
ノブを回してドアを押し、この会議室に入ってくれ。どうだ?」
( ^ω^)「うーむ。ドアノブが、回りにくかったな」
(  ゚益゚)「だよな。二度目は、重みを感じただろう」
( ^ω^)「重みというか。……今、何をしたんだい」
(  ゚益゚)「こちら側からも、ドアノブを掴んでいたんだ」
( ^ω^)「なるほど、それで。……あ、まさか」
(  ゚益゚)「そう、殺人現場の家でも、
この違和感があったんだ。気のせいじゃない。
事件のあと、何度も何度もあのドアを開けた。しかし」
( ^ω^)「しかし、事件の時だけ違和感があったと」
(  ゚益゚)「あの時、家に入ろうとドアを開けた
俺だけが重みを感じたんだ。考えられるのは、
誰かがドアの向こう側でドアノブを掴んでいた」
( ^ω^)「その誰かというのが……」
(  ゚益゚)「おそらく、詐欺師を殺したんだ。そして
家から出ようとして、外にいる俺に気づき、一瞬で消えた。
ドアの陰に隠れたとかじゃない。消えたんだよ」

( ^ω^)「家の中には、誰もいなかったわけだね」
(  ゚益゚)「ドアの周りにあったのは、傘立てと
コート掛けくらい。小さな家で、隠れる場所など
なかった。我々が念入りに調べたから間違いない」
( ^ω^)「うーむ」
(  ゚益゚)「あの時あの家のドアを開けた俺だけが、
殺人犯の存在を感じたんだ。だが、誰も信じない」
( ^ω^)「だろうね」
(  ゚益゚)「あんたは、どう思う?」


( ^ω^)「ひとつ、実験をしてみようか」
(  ゚益゚)「は?」
( ^ω^)「今度は、二人とも廊下に出よう。
さあ、きみがこのドアを開けてくれたまえ」
(  ゚益゚)「わかった、このドアを開ければいいんだな。
……わあああ!」
( ^ω^)「どうしたのかね」
( ;゚益゚)「ドアノブが重い! あの時と同じだ!」
( ^ω^)「じゃあ、ドアの向こうに誰かいるのかな。
ドアをそのまま押してみたまえ」
( ;゚益゚)「そんな……」



(  ゚益゚)「まさか、こんな単純な仕掛けだとは」
( ^ω^)「殺人犯はたぶん、きみのそばにいた
同僚だか部下だかいう、彼だね」
(  ゚益゚)「あいつが……」
( ^ω^)「殺して、ドアにこの仕掛けを施した。
そのあと『詐欺師は家にいる』と、きみに報告した」
(  ゚益゚)「俺は騙されたのか」
( ^ω^)「きみは、優秀なんだ。ただ、優秀すぎて、
ドアノブが重いだけで殺人犯の姿を想像してしまった。
疑いがそちらへいってしまったんだ」
(  ゚益゚)「あいつはそれを期待していたわけか。
しかし、単純な仕掛けだな。
ドアノブを重くするには、これだけでよかったのか」
( ^ω^)「そう。ドアノブに傘を引っかけるだけでいいんだよ」