思いつきを書き留めておきます

 叙述トリックについてあれこれ考えているうち、
へんなネタを思いつきました。



 名探偵金田一耕助は、静かな声で宣言した。
「真犯人の正体がわかりました」
 誰かが小さな悲鳴を上げる。
等々力警部の目つきが鋭くなった。
「間違いないのかね?」
「はい」名探偵は自信ありげに頷く。
 無言で座っていた白いマスクの男が、
わずかに体を震わせた。金田一が推理を語る。

 黙って聞いていた等々力警部が、
突然立ち上がり、大きな声で叫んだ。
「なるほど、あいつの犯行だったのか。
よし、これから逮捕に行くぞ」
 警部は部下たちを引き連れて走り出す。
そして、金田一と白いマスクの男が
残された。白いマスクの男が、口を開く。
「なぜ、警察署の会議室で推理を語ったんですか?」
「僕も容疑者たちが居る事件現場のお屋敷で
推理を披露したかったのです。だけど、
それでは真犯人が自殺するといわれまして。
 等々力警部は、相手に不意打ちをかけるようです。
ところで、そのマスク……。風邪ですか?
お大事に、刑事さん」