五十二冊の中から:パイド・パイパー/ネビル・シュート


「パイド・パイパー」は冒険小説の名作と言われていますが、
これが冒険小説なのか、私はちょっと考えてしまいます。

 第二次世界大戦の頃、イギリス紳士の老人が、
子供たちを連れてドイツ占領下のフランスを
旅する、という物語です。

 このストーリーにおいて老人の障害になるのは、
混乱の中で不通になった交通網や、
疲れてむずがる子供たちなのです。
 そして、主人公の老人は困難に対して抗わない。
気を長く持つとか、忍耐を持って事にあたるのです。
とにかく我慢して、子供たちを守る。
戦争という暴力から守り、子供たちの無事を願う。
 冒険小説と言うより、育児小説?

 老人の耐える姿が、胸を締め付けます。