九冊の猫:赤い柩


 奥田哲也さん。大阪生まれの北海道育ち。
ミステリーとホラーを中心に
活動されている小説家の方です。

 数多くの短編がアンソロジー
収録されているほか、長編ミステリの
単行本は以下の六作があります。
「霧の町の殺人」「三重殺」
「絵の中の殺人」「赤い柩」
「冥王の花嫁」
「エンド・クレジット」


 長編デビュー作のタイトルが
「霧の町の殺人」である(その後、
「霧枯れの街殺人事件」と改題)ように、
奥田さんの作品には霧が何度も登場します。

 霧のほかに、恋愛とブラックジョーク、
異形の死体。これらの四つが、
長編ミステリの中でたびたび
効果的に使われています。

 問題は、異形の死体ですね。
なにがどういうわけか、首を切り落とされた
死体がやたらに出てきます。
 第二長編「三重殺」には、こんな
「著者のことば」が載っているほどです。


 首なし死体とブラックジョークでページが
埋め尽くされている「エンド・クレジット」と、
登場人物たちの恋愛模様や皮肉が印象的な
「絵の中の殺人」が、私の特に好きな作品です。

 そして「赤い柩」。

 吸血鬼をテーマにしたミステリです。
……吸血鬼は、自らの姿を霧に変えることが
できるのだそうです。そう、霧に包まれた
世界で物語は進行します。恋愛も、
異形の死体もストーリーに組み込まれています。

 で、ブラックジョークです。
 物語の終盤で明かされる
ある行動、ある理由は
かなりきつい皮肉、ブラックジョークだと
私は思うのですが……。


 こちらの書店に並んでいますので、
お読みいただけるとうれしいです。
http://sweethereafter311.blog.fc2.com/

(2015年1月1日、文章や写真を追加しました)