( ^ω^)探偵の敗北

( ^ω^)「やあ、久しぶり。私だ」
( ^ω^)「……私のことを忘れたのか?
私は名探偵だ。数々の事件を解決してきたんだぞ」
( ^ω^)「……そうか、知らないのか。ぐすん」
(;^ω^)「まあ、名誉とかプライバシーを考えたら
誰にも話せない事件があるし、大活躍しても
一部の人にしか知られないのは名探偵の宿命だな。
……私の日記を本にすればベストセラー間違いなし、
大金持ちになれるんだけどなあ……」
( ^ω^)「いや、愚痴っていてはダメだ。
今日は仕事がある。頑張ろう」

( ・Ω・)「初めまして。この劇団の代表です」
( ^ω^)「やあ、初めまして。
本日は、舞台劇の監修とお聞きしたが?」
( ・Ω・)「はい。次の公演で
ミステリーをテーマにしようと思い立ちまして」
( ^ω^)「それで、私の意見をお聞きしたいと」
( ・Ω・)「はい。まずはリハーサルをご覧下さい」

 舞台の上には、紳士と探偵の二人がいる。
「ほう、つまりこの私が幾万もの現金を盗んだと?
探偵さんはそうおっしゃるわけだ」
「ええ、そしてこの部屋の中に隠した」
「それなら、気がすむまでここを探せばいい。
この部屋から真珠やエメラルドが出てくるなら、
私も見たいものだ」
「例えば、この本……」
「古書ですが、べらぼうに高いものではないですよ。
ページのあいだに高額紙幣がはさんであるわけじゃない」
「それでは、この天使の彫刻……」
「珍しいでしょう? でも、銅製ですよ。
金でできているわけじゃない」

( ^ω^)「ふむ、探偵はハンサムで
堂々としてるな。まるで私のようだ。
それに比べて紳士の方は、視線が
あちこちに動いて落ち着かないな。……お?」
( ・Ω・)「なにか気付きましたか?」
( ^ω^)「もしかして、盗んだ現金は……」

 舞台の上では、探偵の長口上が始まる。
「多くの人は追いつめられると、焦りが態度に出る。
例えば、大事な物をつい目で確認してしまうとか。
ところで貴方は、さっきから落ち着かないね。
部屋のあれこれを見ている。……もしかして、
盗んだ現金で、部屋のあれこれを買ったのかな?
古書や、珍しい天使の彫刻……。
売れば、それなりの金額になるのでは?
買った時より目減りはするだろうが、
盗んだ現金を剥き出しで部屋にしまっておくより
はるかに安全だ」

( ^ω^)「私が想像した通りの展開ですな」
( ・Ω・)「いやあ、さすがは名探偵。
あなたをお呼びしたのは正解だった」



( ^ω^)「謝礼をはずんでもらった。
一日の稼ぎとしては良い感じだ。帰ったらごちそうを食べよう。
ところで、劇の筋立てはあれでいいのかなあ。
ラストの謎解きがアレでは、観客が怒りそうだ」
( ^ω^)「……お? おお?
私の部屋が荒らされてる! 泥棒か?
狙われるほど高価な物は……」
( ^ω^)「あ、ああ! 私の日記がない!」
(;^ω^)「あの日記には、
過去の事件の話が沢山書いてあるのに!
本にして売るつもりか?
いや、恐喝のネタに使われるかも」
(;TωT)「ああ、そうか。舞台劇の監修なんて嘘、
劇団の連中は泥棒とグルだったか。
私がちゃちなミステリーを見てるあいだに
日記を持って行ったんだな。騙された。ぐすん」