五十二冊の中から:光の帝国 常野物語

 ジャンルは……お伽噺でしょうか?
 頭の中にある好ましい人物像や美しい風景を
そのまま文章で表現したような、不思議な作品集です。
自由きままにストーリーが流れていき、
とつぜん終わったりします。

「これから先、大きく変わっていくでしょう」、
そこで記述が途切れているような感じです。
オーケストラの団員が、一人ずつステージに上がる。
みな、とても美しい楽器を持っている。
最後に、指揮者が登場する。指揮棒を振り上げた
その瞬間で、この本は終わっているような感じなのです。
どんな演奏になるのか、それは明かされません。

なので、どんな演奏になるのかは、
それぞれの読者が自由に想像する。
この本はそういう楽しみ方ができると思います。